アガサ・クリスティーの『オリエント急行の殺人』(山本やよい訳 ハヤカワ文庫)を読みました。
買ったきっかけは、ミステリーをすごく読むイメージはなかった友達が「『オリエント急行の殺人』がおもしろかった!!」と言っていて、「あれ? 私ちゃんと読んだこともなければ映像作品でも頭からまともに観たことなかったな」と思ったからです。
少し前に三谷幸喜のドラマ版でなんとなーくトリックを見たような気がするもののほとんど覚えておらず、人物設定なども全然知らないで見たはずなので、ちゃんと読まなきゃなと思ったのです。
さらに、元々母がよくポワロのドラマを観ていたり、以前やっていたポワロのアニメを観ていたことから、ポワロさんに馴染みがあったのも大きいですね。これまで1冊も読んでなかったけれども!
逆に「いい加減、超超超有名な『オリエント急行』くらい読んでおけよ私」と。
実際、これは本当に自分で読んでよかった!
※以下ネタバレあり
私は物忘れがひどいので(特にカタカナ人名が苦手!)、この作品は特に紙書籍で何度もあちこち戻りながら読んでよかったです。
登場人物がたくさんいるにも関わらず、一人一人の描写がはっきりしているので、ちょっと名前を覚えきれなくても「この特徴の人の話をしているな」とついていけるのが助かりましたね~ 私もうっかり乗り込んでしまった気分になります。臨場感がある。生々しいといえばそうかもしれない。
終盤の種明かしで伏線を読み返すターンがかなり大変でしたが、自分の手で確認しながら読んだおかげで理解が深まった上に、伏線の散りばめ方の巧妙さを痛感することができましたね。
アガサ・クリスティーすごい。
解説で有栖川有栖さんもおっしゃってたのですが、この作品はよく知らないうちに読んだ方が絶対楽しいですね。
トリックに関しては、「ミステリーだからといって、誰が致命傷を負わせたかをはっきりさせる必要はない」のが、「やられた!」と思いました。ついついそこに思いを巡らせてしまうのを突かれるなんて!
トリックだけでなく、本作の背景となる一家と登場人物の関係や時代背景、出身地のお国柄や習慣などが絡み合うのがまたおもしろい。自分が知らない時代や習慣などを知るのも楽しくて、それらが事件にうまいこと関わってくるところに感嘆しましたね。無駄がない。
これはこの当時の設定だから生きるのだと思います。逆に今の時代の視点にいる私が読むと新鮮に感じるところが多かったです。その時代に生きていないとその発想はできないなと思うところが結構ある。それがかえって深みを与えていておもしろい。
ただミステリー要素を楽しむだけの作品じゃないところに、多くの人が惹かれて支持され続けているのだろうと思いました。
やっぱり原作をちゃんと読むのは大事だな~と思いました。さて、昔の方の映画と三谷幸喜ドラマ版を観ようかな。あと長距離列車の旅がしたいですね。殺人事件は勘弁してほしいけれども。